伯母

このひとをホームに尋ねたのは二年前。 そのときのことはブログに書いた。 いやな気分が半年くらい抜けなかった。 もう行くまい、と心に決めた。 心に決めることなどなんにも意味がないことは、65年間実証済みだが。 ひと月ほど前電話すると、目がみえなく…

梅雨の中日

雨がつづいたあとの晴れの朝。 ひさしぶり台所の窓をえいっと開けると、窓枠に置いてあったオリーブ油のびんがすっとんで床に落ち、からんという音がしてうすいプラスティックのふたが跳ね飛んだ。 油が床にこぼれ、黄色い液体がけっこうな量、びんの転がっ…

出雲

先週末、姪の結婚式が出雲大社であった。 土曜日のフライトに乗って日曜日が友引で挙式、帰る便がないのでもう一泊して月曜日の昼過ぎに帰ってきた。 腰の調子が万全ではなく、やや心配したが、伯母からゆずり受けた黒留袖一式を持って出雲へでかけた。 早い…

結婚式

これまで結婚式に出席した回数は、ひとと比べてすくないと思う。 呼ばれて断ったこともあるし、当然呼ばれるだろうと思っていたら呼ばれなかった、ということもあった。 なんとなく縁がない。 姪っこの結婚式の前夜、きもちわるいぞ、と思ううちに吐き出して…

とうとう犬が来た。 黒いわんちゃん、名前はブラッキー。 中学で習った英語「Tom and Susie」にでてきた黒い犬、名前を「Blackie」といった。 日本語で言えばくろちゃんですね、と英語教師が言った。 英語は赤点だったのに、そんなことは覚えている。 英語教…

十連休

5月の連休も、夫が現役会社員だったころのようなほっと休めるまとまった休日というような位置付けではなくなったが、今年は元号が変わるという特別な十連休である。 ぎっくり腰が信じられないほど長引いて、水曜日の仕事に年度変わってそうそうに穴をあける…

みずがきやま

バースデー・ランチに神楽坂へでかけた。 夫はなんと六十代最後の年になってしまった! 神楽坂には、夫の親友の娘(26)が最近住みはじめ、ハッピー・バースデイのラインを届けてくれた彼女に「いま神楽坂のレストランにいるよ」と返信すると、何時何分にお母…

ついに・・

金曜日、二歳児クラスの「カエル」で両手をパーにして着地して、立ち上がろうとするとくぅぅぅぅっと腰がつって、そのまま立ち上がれなくなった。 電子ピアノを盾にして、なんとか五歳児まで終了。 しかしどうやってピアノの椅子から立ち上がって、ホールを…

2019年度はじまり

新しい年度がはじまった。 毎日の仕事ではないのだが、続くときは続くこの仕事。 夏と春は比較的時間があくので、疲れてくるとあと何回でしばらく休みだ、と回数を数える。 ひまになったらあれもしよう、これもしよう、と頭で描くのだが、ほっとしたとたんに…

定食屋さん

荻窪の定食屋は、一時半を過ぎているのに満員で、外ですこし待つ。 二人がけのテーブルが四台密集し、あとはカウンターの狭い店内。 やっと空いたテーブル席に座る。 ずらっと並んだメニューがしぶい。 豚生姜焼き定食、鳥の唐揚げ定食、ハンバーグ定食、焼…

お花見

ここ数年一緒にお花見をする友だちから「今年はどこにしましょう」と年賀状が来ていて、去年も一昨年も彼女に行き先を決めてもらっていたので、今年はたまたま新聞でみつけた「墨堤」にしよう、と思った。 新聞をコピーし、友人に渡し、待ち合わせ日時を決め…

アカハライモリ

アカハライモリのカメは(カメという名のアカハライモリは)小さなエサをひとの指から食べるようになり、このまま慣れるのかと思えば、そうでもなく、水中に落としてやっても別な方向を探したりして、どうも学習しないようだ。 実は、このカメはメスで、オス…

会話

土曜日の東海道線車内。 ボックス席の窓側に向かい合って座る女性の横に席を取った。 なにしろ寒い。 ホームで電車を待っているあいだに冷え切ってしまった。 ふつうはボックス席に人がいる場合は座らないが、そこが暖かそうである。 ひとのぬくもりで暖をと…

チャコちゃん

中高一貫校の女子校で、急に来なくなったスズコのことを考えていたら、なぜか小学校時代のチャコちゃんのことが思い出されてきた。 チャコちゃんのあだ名は「ゾウ」 身体が大きく、どっしりしていた。 勉強がよくできて、本をたくさん読んでいた。 卒業後、…

3.11

不安なきもちは、どうしてだろう、と思ったら3.11が近づいているからなのだ。 今日はテレビをつけない。 ラジオもFMクラシックのみ。 それでも午後のこの時間になって、どうしても苦しくなった。 過呼吸のような、過呼吸になるのが怖いような。 桜の木の下に…

金満里

大雪情報の日、「ウリ・オモニ」の公演に行く。 朝から天気予報は過去の大雪の映像を流して、外出を避けるように警告しているし、前日長崎空港から羽田に戻ったばかりで疲労感が残っている。 夫は前夜ひどい咳をしていて、今日は一日休んでいるほうがよいの…

ナガサキ

ナガサキは、娘と311のときに一泊した。 娘はひとりで資料館へ行き、私は資料館の喫茶店で待った。 ずいぶんたってから戻って来た娘がまっすぐな目をして、 おかあさん、すごいよ、ぜんぶきえちゃうんだよ、と言った。 佐賀から長崎までの線からすばらしい海…

原爆ドームとひろしま美術館

資料館のあと、目指すのはもちろん広島風お好み焼き。 夫がアイフォンでランクの高いお好み焼き店を探し、そこまで歩いていくと朝出発したばかりのホテルのすぐ近くであった。 狭い店内と、成功したオーナーにありがちの饒舌なひとり舞台のカウンターと二人…

原爆資料館

今回は目をふさがずに見るのだ、と決めていた。 311のとき、保護犬二頭を疎開させるために佐賀の妹のところへ行き、当初は犬をそのまま残して娘と新幹線で東京に戻る予定だったから、原発事故を起こした国の歴史を見ておこう、とヒロシマによる予定だったの…

ヒロシマへ

ヒロシマへ向かう新幹線のなかで、つらつら思っていたのは叔母のことだ。 広島は、叔父一家が一時期転勤していた場所で、40年ほど前にひとりで訪ねたことがあり、小雨のけむる宮島へもでかけ道中鹿と対面してうろたえたりした。 そのとき、叔母は東京から…

学校システム論

暴力が学校に集中する理由が知りたい。 世界のあちこちで学校を舞台にした事件が起こる、コロンバイン高校、池田小、神戸の事件だってまず校門から始まったのだ。 その理由。 放送大学がふつうにラジオから聴けたころ、ふと耳にしたこの授業がわすれられない…

こころの時代

辺見庸という作家を「あたいはわりとすきです」と手紙に書いてきた友だちは、もう死んでいて、相模原の事件を知ることはない。 彼女に推薦されて一冊くらい読もうとして、熱感というか、生ぐささというか、さきを読めなかった。 その作家が生活クラブ生協の…

成人式の車内

意外に、空いている。 晴れ着姿の子は、駅に向かう途中ひと組みかけただけ。 ひと駅立ったが、前のひとが降車して座れた。 となりに座る若い女の子ふたり組。 大きな声でしゃべっている。 なかなか乱暴である。 なんだよあれ、Bパックってぜったいやらね。 C…

モモ

あれも読みたい、これも読みたい、定期購読している「不登校新聞」をきっちり読んで切り抜きたい、と思っていた正月休み。 とうとう読みきったのは「モモ」だけである。 この本は、これまでなんども読もうとして読めなかった児童書である。 一時はブームにな…

吐ききれない毒

ひょっとすると、すでに具合がわるかったのかもしない。 元旦に楽しみにしていた賀状が届き、ほとんど印刷だがわずかな肉筆からそのひとらしさがのぞいてうれしい。 年賀状だけは毎年たのしみ。 ここ数年、印字で自分の短歌を送ってくるともだち。 このひと…

2019年正月ことはじめ・・リアルな現実

《感染注意の記》 恒例の凧揚げは、あたたかな日差しにあふれた多摩川で。 厚着をしていったが汗ばむような陽気だった。 近くでよそ行きのコートとよそゆ行きの靴を履いた小学三年生くらいの女の子が、お父さんとお母さんと一緒に凧を揚げていて、風のない空…

待ち合わせ

若い友人の誘いで、「ランドフェス」なるものに行ってきた。 お天気は雨。 「ランドフェス」とはなんのことなのか行ってみるまでわからないのは、友人の説明にやや不足がある、と思う。 私のお目当ては、舞踏家大野慶人の踊りを観ること。 「これも良さそう…

2018年のベストブック

フジコさん

昔勤めていた役所のともだちにフジコさんがいた。 そもそもなぜ、フジコさんとともだちだったか、といえば親しくしていた同僚とフジコさんがともだちだからだった。 なぜ同僚がフジコさんとともだちだったのか、といえばふたりとも年がら年中遅刻しそうにな…

第一次世界大戦終結 アリス・マンロー「Family Furnishings」 より

BBC放送のキャスターやリポーターが赤い花のワッペンを胸につけている。 今日は第一次世界大戦が終わった日です、と日本語同時通訳のアナウンサーが米国大統領や、テロ、死刑になりかかったものの釈放された女性に対して抗議デモに集まる男たちの拳、などの…