まつもとがTVから消える日

このひとが画面に登場するたびに、即チャンネルを切り替えてきた。 Gのような存在。 チラリと黒い影が見えただけでぞっとする。 フシギでならならないのは、このみにくい、半笑いの顔でいやなことを言う芸人に対して、私以外のひとが文句を言っているのを聞…

森は生きている 後編

カーテンが開いて、舞台が始まった。 雪深い森のなか。 茶色い着ぐるみを着たリス二匹と、尾の短いうさぎ一匹、木の上から美しい黒い羽をもつカラス、そして狼。 このうさぎはかの有名なおみじかうさぎである。 楽譜でしか知らなかったおみじかうさぎの歌を…

森は生きている 前半

昨年、チケットを生協で購入したが、娘がコロナにかかり、われわれも感染している可能性があった。 老犬もあぶない状態だったので新宿サザンシアターまでとうとう行けなかった。 思い切って芝居のチケットを手に入れて、 ムダにすることがたびたびある。 今…

「老人と海」にみる身体性

ロシアのアニメ作家 アレクサンドル・ペドロフの挿絵 「老人と海」というヘミングウェィの小説は、中学校に入ったときだったか、高校に入ったときだったかにだれかから英文の本をもらった。 淋しそうな老人が舟のうえから釣り糸を垂れている絵が表紙に描かれ…

満月

犬と一緒にスーパーの出入り口にあるベンチに座っていると、足を引きずりながらスーパーから出てきた女性が隣りに腰掛けた。 たいてい大型犬と座っていると敬遠してだれも座らないのだが、買い物を終えて一息つきたい、という感じのどっしりした女性は静かに…

祖母のジェラシー

日曜日、四谷の大学で午前、午後とセミナーを受ける。 一時間ある昼休みに、外へ出るとけっこう寒い。 主婦の友会館もこじんまりしてしまって、立派に成長しているのは駅前大学と駅前のアトレ。 コートの襟をぎゅっと詰めて歩いていくと左手が土手になってい…

淋しいのは私だけではないらしい。

往復3時間かけて仕事場へ行く。 仕事場に近づくにつれて、なぜか淋しい気分に陥っている。 日が曇ってきたせい? そんな通勤途中、京王線から多摩モノレールに乗り換える駅コンコースの本屋でこんな本が並んでいる。

「太陽の帝国」

ビデオ・ニュースの宮台真司センセイの推薦で「太陽の帝国」J.G. バラード著を図書館から借りて読んでみる。 戦争というものの実質が日常生活の側からそっくり見えてくる。 主人公は子どもである。 11歳で太平洋戦争が勃発し、14歳までを日本軍の収容所…

JR 蒲田駅

私鉄を二本乗り継いでJR蒲田に降り立つと、そこはどこの駅とも違うアナーキー。 渋谷とも新宿とも、川崎とも違う。 どこか羽田沖の潮の香りが漂っている。 どろくさい空気である。 私が行く仕事場は、私が育った地域にある開発されてしまった京浜第二国道沿…

藤田まこと

ある朝、どうにも歯が噛み合わない。 お茶を飲めばなおるだろう、朝ごはんたべれば落ち着くだろう、と思いながら、改善せず、夕方整体に行った。 これでよくなるだろう、と思っていたが、 帰りの私鉄を待っていたら気分がわるくなった。 心配になるが、たっ…

北公次

フォーリーブス全盛期に中高校生だった。 マー坊だの、ター坊だのきいきい騒ぐクラスメートを《おろかしい》とななめからみていた私は、芸能ニュースにも週刊誌にも無縁だったが、 それでも北公次についてはどこかネガティブな印象を持っていた。 脱退したと…

「外套」ニコライ・ゴーゴリ

YouTubeで「外套」を聞く。 「外套」は、むかし薄い文庫本で読んだ。 中学に入ったころロシア文学に傾倒した私に、「お前、外套を読んだか」だったか「読んでみろ」ではなかったと思うが、父が聞いてきた。 父はいくらかロシア語ができた。 「かわいそうだぞ…

森を守る

集会に行ったあと、あらためてビデオ・ニュースの動画をていねいに見てみる。 https://www.videonews.com/press-club/230131-ishikawa 石川先生の装いは、私が通った女子校の先生のスタイルそのもの。 50年以上も前なのに、何故同じ? 装いは、ともかく、 …

集会

土曜日の夕方、私鉄にからJRに乗り替え、さらに代々木で中央線に乗って外苑の森絵画館前へ向かう。 そういう場に行ってみる気になったのは、あんまりだ、と思う事柄がかさなったからだ。 そういう場へ行くのは、何年ぶりだろう、と考えると40年? 五本の指…

「限界から始まる」?

上野千鶴子と鈴木涼美の往復書簡、一年間に渡るという十通の手紙。 鈴木涼美という作家は、TOKYO MXの番組で知った。 このひとどういうひと? 元セックスワーカーである。 東大大学院の出で芥川賞候補となるような作家であり、両親とも文化人である。 で、ど…

猫事情

1月から3月まで、パブリック・シアターの地下稽古場で暮らし、発表会が終わり、演劇ワークショップのDVDが完成したお披露目会が行われたときには、娘は同じ家に住んでいなかった。 4月に猫を連れて娘が出て行ったあとの、がらんとした家は淋しい。 思わぬ…

ゲランさま

メークアップの化粧品はゲランと決めている。 あなたくらいの年齢だったらゲランかシャネル、と若い友人からはっきりと言われたのが効いた。 10年以上前のことだ。 そして、ゲランは松屋ですよ、と。 松屋のコスメは、他のデパートの化粧品売り場に漂う女…

富良野から美瑛へ

富良野線に乗り込む。 一輌の車窓からみえる景色は、カナダの作家アリソン・マンロー描くヒューロン群の牧草地を連想させる。 美瑛で降り立ってみると、急に寒い。 前日まで、北海道にいる、と思えないあたたかさだった。 駅前の観光案内でもらった地図を片…

富良野

4月になるともうどこにも雪が残ってないらしい。 ネットで検索すると富良野のスキー場のリフトが動いている。 半額の航空券で旭川、旭川からバスで一時間ちょっと乗れば富良野へ行ける。 去年、トマムへ行ったとき、新千歳空港から乗ったバスが延々となにも…

演劇ワークショップ

いつのまにかひな祭りも、311も終わっている。 誘われて応募した演劇ワークショップの選考に受かって、1月から3月まで、怒涛のような日々を過ごし、あれあれよという間に本番を迎えた。 《私にこんなことができるの!》 と、ツッコミを入れる隙を与えな…

柿の木

お隣の柿の木。 この木をときどき撫でる。 柿の木は、私が五歳前、家にあった柿の木とは違う立派な木だ。 私の家にあったのはひょろひょろした渋柿の木だった。 その木の下で、母が父に手伝われて自転車に乗る練習をしていた。 母は、とうとう自転車に乗るこ…

フィッシュマンズ

日本映画チャンネルで、音楽ドキュメンタリー傑作選をやっている。 「遠藤ミチロウ」というロック歌手のことは知らなかった。 私にとって遠藤といえば、遠藤賢司である。 ミチローウさん自身が監督をしたドキュメンタリー映画で、こういう世界もあるのね、と…

牛腸茂雄写真展

朝、起きるとテレビを点ける。 Eテレで写真現像をしているひとが映っている。 犬の白黒写真が飛び込んできて、見入ってしまう。 父が下町でDPE屋を営んでいたので、子どものころから写真雑誌を見てきた。 好きな写真は切り取ってスクラップを作っていた。 い…

Gについて

夏休み明けのできごと。 日野の現場へ行くために高幡不動駅でモノレールに乗り換えるのだが、 水道で手を洗い、水滴のついていない向かいの鏡だけのカウンターで顔をチェックしていると、鏡の奥で特有の歩き方、やや左右にかたかた傾けながら、速いスピード…

神之木公園

神之木公園にはクマンバチが出没するらしく、《近づかないでください》と書いた紙が木のふもとに貼ってある。 紙にはA4くらいのサイズで上を向いたタテ長のハチの絵が描かれている。 9月にこの公園に入ったら急に裸足になりたくなって靴と靴下を脱ごうか、…

百歳の大伯母

今月9月18日に満100歳の誕生日を迎えた大伯母(祖母の末妹)から、ひとりで来てほしい、と電話があったので、出かけてきた。 運悪く、蒸し暑かった朝の天気が、王子で京浜東北線に乗り換えるころには肌寒くなる。 地下的のなかではハンド扇風機を顔に…

清澄白河

土曜日は、台風と予報を聞いていたが、起きてみたらそんなことはなく、 その週の不調を週末にためこんでいたくない一心で出かけることにした。 ハガキで案内をもらっていた中川さんのジュエリーを見に行ってみよう。この方のアクセサリーを初めてスパイラル…

Fathers

「Fathers」という短編がある。 アリス・マンローが育った、農場が舞台である。 作家が「書き尽くした」と述べている家族の歴史の場所であり、母親がその貧しい農村部から娘を解放させたくて、町の学校に通わせるため、わざわざ町に倉庫を借りて住所を登録し…

少女像

「これは平和の少女像です」という説明書きがあった。 しずかに平和を祈る像。 肩に乗せたきいろの文鳥が可愛らしい。 像の隣に同じ高さの椅子が置いてあって、観たひとが一緒に座って写真が撮れるようになっている。

名古屋 in 2022夏

新幹線ひかりで名古屋。 名古屋には美味しいものがたくさんある、と聞いている。 日帰りなので、新幹線のなかで食べたいものとお土産に買って帰るものをあらかじめ決めておいた。 祖父が三重の出身だったので'おくに'に帰るときは、名古屋から近鉄に乗ったも…