夏にフリーダ・カーロを観た時にチラシをもらってきた「山口小夜子」のドキュメントを観に行く。
のっけから高橋靖子さんというスタイリストが登場し、小夜子さんの思い出を語る。
彼女の文が好きで、装苑だったかに連載していたエッセイを切り抜いて集めていた。
特に「ユージンさんのこと」という日本に住みついて、水俣を撮り続けた写真家がお隣さんだった時のエッセイが好きで、短いエッセイを何度も読んだ。
ユージン・スミスの仕事をする生の姿が描かれていて、コツコツと努力する米国人ジャーナリストのひたむきさに目がぱっちりと覚めるような文章だった。
ある時、彼の写真集ともども捨ててしまったのだが。
天児牛大が登場して驚いた。
一緒に踊る映像まであった。
天児牛大という舞踏家。
この人の肉体を舞台で観てしまうと、ダンスが急につまらなくなる。
この人が肉体を舞台に登場させると、劇場全体のの空気がカーンと緊張し、微かな身体の動きに魅了されるのだ。
山口小夜子さんとのコラボレーションは写真で見る限りにおいてマッチしているが、舞台ではきっとそうはいかなかったろう、と思う。
舞踏家と見せる肉体とはべつのもののように私には思える。
映画には、魅力のある人がたくさん登場するのだが、山口小夜子という人の実態はついに茫洋としてわからない。