ジレンマ

ときどき、全てが嫌になって放り出したくなる。

なんのかんのと理屈をつけ、煽り、鼓舞してやってきたことの一切合切がどうでもよくなって、ばかばかしい。

これはほんとうに、ときどきそうなる。

子どもの仕事も、おとなの仕事も、家の仕事も自分自身の勉強も、げんなりして心が動かない。

心が動かなくても、お金をもらっていて、待っているひとたちがいる場には出かけていくし、

しなくてはならない身の回りのこと、

食べなくてはならないし、

洗濯しなくてはならないし、

掃除しなくてはならないし、

犬(ダル)は母の不調を感じ取って一日じゅうきゅうきゅうと切ない声を出している。

冷たい風に対抗しながら、土手道を歩いて散歩させなくてはならない。

 

正月明けに、餌を食べなくなって、ぐたっとしているので心配していたら、げほっと大量に吐いた。

いや、な・なにこの臭い、なんの臭い?

猛烈な速さで頭に検索エンジンをかけると、どうも年末に床掃除に使ったワックスの臭いである。

ワックスの染み込んだ雑巾を喰ったのだ。

この子は引き取り救助犬で、前からそういう癖があるのだが。

一食は抜いて、徐々に増やしていったが、散歩ものろのろして歩かない。

いつもの土手に向かう途中、いや引き返したほうがいいだろうか?

もし途中でぶったおれたらどうする?

放置して引き返して、車を持ってくるしかない、でもその間、どうする?

メモでも添えて通行人に頼むか、紙とペンは持ってないぞ、と散歩用カバンの中身を思う。

それにそんなことしてくれるひまな通行人がいるわけない。

引き返したほうが無難だ。

でも、歩かないと元気にならない。

動かなくてはなウンチも出ないし、まだ雑巾が胃の中に残ってるかもしれないし。

 

と、悶々としながらよろよろする犬を引きずっている。

時間をかけて土手に出て、今度は帰り道のことを心配に思っている。

いつもいつも心配して、不安に苛まれ、リスク回避の声に悩まされている。

散歩から帰ってきて、大量に水を飲むザックのやせた背中を見ていると最後の一日まで土手に出たいという気持ちになっている。

 

たいていのひとが、毎日毎日同じことをして暮らしているわけだし、私も大旨そのことに感謝して生きているのだが、疲れはたまってくるし、飽きはくるし、そんなときどうやってみんな乗り切っているのだろう。

温泉に行ったり、友だちと遊びに行ったりして気を晴らすのか。

 

気持ちを切り替えるために、ずっと欲しかった仕事用のバレエシューズを買う気になって、二回ほど行ったことのある東中野のダンス用専門店に電話する。

「現在使われておりません」

ネットで見ると「閉店。長い間ありがとうございました。」

がっくりきて、別の店を探し、ネット注文をする。

敏速に届いたSサイズシューズは私には小さく、親指がつまって痛い。

返品してもらことにして、どんよりと寒い土曜日に郵便局の本局に出かけて行き、返送。

Mサイズもさっと送ってきてくれたが、今度はどうも大きい。

カペジオのダンスシューズが透明ビニールに入ったまま放置され行き場がない。

困った。

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散歩から帰っても、私の膝の上からどこうとしない、ザック。