春休みが終わる。
ぎっくり腰を境に、なるべく外て出ることを心がけた。
まずは江ノ島水族館へ、ラッコ目的で行ったが、またしてもラッコは居ない。
小学生やアベックで賑わう江の水で、もぎりのおねえさんに、
ラッコにはどこで会えますか?
と尋ねると、一言のもとに、江ノ島水族館にはラッコはいません。
え?
娘に、え、ラッコに会えるよって言ったじゃん、と
腰痛の残る腰をかばいながらクレームすると、
どうやら八景島と間違えたらしい。
ええーっと残念であるが、まあ海風に触れて帰ればいいや、と水族館の窓がすらすらと海岸線に沿っていて、晴れた海岸に遊ぶ、サーファーや子どもの姿を眺めている。
水族館では、おおむねおとなもこどもも楽しめる。
ただ哀れなのは、ぐにゃぐにゃの新生児と、新生児を抱いてスマホをいじくるパパ。
上の子とママは、イルカやペンギンのところへ行ってしまったのだろう。
そのうち、ショーが始まると言う。
外のプールで行われるイルカショーのようなものを想像していたら、館内放送で大きい水槽の前に集まってください、と言っている。
美ら海水族館にあったような、大きな縦型の水槽というより、ガラス張りの部屋に水を張ったというプールの前に老若男女がひしめいている。
そこを見下ろせる二階のベンチに座って、ショーが始まるのを待っていると、水族館のユニフォームを来た年配の太った男がマイクを持って、これからショーが始まります。
始まる前の注意を申し上げます、と始めた注意がこまかく、しつこく、くりかえし、頭が痛くなってくる。
やめる?
と娘に言うとどっちでもいい、
もうちょっと待ってみる?
いいよ、
ということでいらいらいらいらしながら、太ってメガネをかけたおじさんのこまごまとした注意。
床にはこうやって座れ、立っているひとはこうやって立て、はい、そこのおともだち、もう少し足をひっこめて、この色から出ないようにお願いします、よいですか、この色の部分から、足を出さないようにしてください、みなさんわかりますか、この色です。
ほんとうに嫌である。
私はチョー劣等生で、学校でもこういうしつっこい説明が始まると反抗心でいっぱいになって、一言も聞かないぞ、と両耳を両手で押さえるような生徒だったから、一言も聞かないで困るのはあんただぞ、と堂々と教師は私を最下点におとしめ、おとしめた上にうすわらいでばかにする、という報復の処置をとったものである。
ショーが始まったと思うと、若いきらきらしたウェット・スーツを着用し、変わりみつ編みのかわいいお姉さんがでてくる。
ウェット・スーツに包まれた若い肉体がはちきれんばかりである。
ところが、始まったのは、魚の説明。
なんだよ、こんな説明聞いたってしょうがないや、帰る?
と娘に聞くと。
始めが一番つまらないから、もうすこし待ったほうがいいよ、おかあさん、
と言う。
まさか、あのひとが水槽の中に入るわけじゃないよね、と思っていると、なんときらきらのお姉さんがシュノーケルをつけて、水槽のガラス越しに登場したのである。