こちらも石井桃子さんのエッセイで知ったファンタジー作家。
「思い出の青い丘」という自伝を図書館で借りてきた。
うまくない翻訳。
サトクリフの赤ちゃんのころ、幼児期、歩くことができないと分かってからのもの。
父親の一緒に写っているから、撮ったのは母親だろう。
父親の、ユーモラスな愛情たっぷりの笑顔と、いたずらっこの娘。
いつか、まだ東急線目黒駅のホームが高台になっていたころ、目黒区のプールへ泳ぎに行った帰り、
小学生くらいの女の子と、足元にうずくまるようにかがんだ父親の光景に目を奪われたことがある。
世界にふたりだけ、というような親密さ。
女の子の両足に歩行器付きのブーツが装着されていて、その日プールに来ていた養護学級の子どもたちのひとりだったことがわかった。
女の子の髪もお父さんの髪もプールの水で濡れていた。
父親は、うっとりするように娘の顔を見上げていて、女の子はふわふわ笑っていた。
障がいのある子と親。
ほんとうに、世界にふたりだけだったら、と思う。
サトクリフは、母親の必死の特訓に答えて痛ましい訓練、痛ましい外科手術に耐えてきたが、ついに思うようには歩けなかった。
母親の死後、念願叶って車椅子となり、父親とふたりで世界旅行へ出かけた、と言う。
手綱をゆるめることができない母の苦労もわかる。
ふたりを傍観しながら、愛情を注ぎ続ける父の胸の内も理解できる。
「親」として、じぶんはだめだったなぁ、と思う。
だが、父よりはましだ、そのことに間違いはない。
「パパ、あんたよりはましだよ」
父の本棚に「ヒトはなぜ子育てが下手か」という松田道雄の新書があったことを思い出すが。