桜の花が満開になったら、と決めていた。
寒い日が続き、なかなか咲かなかった桜が、いったん咲き出すとあっというまに大ぶりの花びらをつけ、二階の窓を開けると鼻先にぐいと顔を寄せてくる。
四月九日日曜日、雨。
午前中、小止みのときにを狙って、三人で外へ出て、あらかじめ掘ってあった穴のなかに、骨を埋めた。
手放せず、抱きしめて泣いていた骨壷の中を覗くと、そこには生きていたザックのかたちどおりの骨が入っている。
細くて薄い。
手のひらをあてたときのザックのあたまを思い出す。
夫は、多摩川の写真と北斎の描いた多摩川と富士山の絵葉書を一緒に埋める。
あいつは多摩川が好きだったからな、と。
前日、西荻窪の風呂屋近くで買った小さなバラの花を添えている。
ザックが土に帰り、もっと大きくなって、もっと近くに居る気がする。