朝、ふとんのなかでへんな頭痛がする。
後頭部の皮膚がひっぱられるような痛み。
初めての感覚に怯えて、家族を呼び、あたまに手を当ててもらう。
肩がひどく凝っている。
肩こりが原因かもしれない、と娘がネットでしらべてくれる。
そういえば、BBCでメーガン・マークルさんとハリー王子のウェディングシーンを長時間観てしまった。
かなりの時間、目をこらして画面にはりついた。
そのせいかもしれない。
そろそろテレビを観るにも老眼鏡が必要になっている。
ちょっと恥ずかしい。
昔の職場に十歳以上年うえの友人がいた。
彼女は安保闘争の時代の元活動家で、フェミニスト、といえばいえたかもしれない。
「ザ・フェミニスト」上野千鶴子・小倉千加子によれば、結婚しているおんなはフェミニストとはいえないそうだから、彼女はフェミニストといえるかもしれない。
結婚もしなかったし、子どももいなかった。
なよなよと媚びるおんなに対しては容赦なかった。
その彼女が、週末ロイヤル・ウェディングをずっと観ていた、というのを聞いて、絶句したことを思い出す。
そのウェディングとは、ハリー王子の母、ダイアナさんの結婚式である。
私には、英国王室の結婚式を観るなど思いもよらなかった。
私の顔を見て「ミーハーだからさ」はははは、と大口をあけてわらった。
私のおどろいた顔がおかしかったのか、普段おとこと結婚なんてふん、と言っている自分への自虐か。
メーガンさんという黒人の血の入っているひととハリー王子の結婚を、英国王室が受け入れた。
カラードで、平民であり、バツイチである彼女の堂々たるふるまい。
一点のくもりもないような彼女を、どこからから狙撃犯がねらっているのではないか、
華麗な純白のウェディング・ドレスが血塗られたものになるのではないか、
画面を観ていてへんに緊張した。
こわくて背中がぞくぞくした。
英国ミステリー、シャーロック・ホームズの見過ぎである。
その友人は、ダイアナさんの死を知らずに亡くなった。
私が母となり、オケタニ式母乳育児をしていたころ、十年以上たって病気が再発した。
入院した病院に、赤ん坊を実家にあずけてでかけたのを思い出す。
授乳と授乳のあいだの二時間半しか、私が赤ん坊と離れていられる時間がなかったから、大急ぎで出かけて、大急ぎで戻った。
ロイヤル・ウエディングから、そんなことを思い出す。