2019年正月ことはじめ・・リアルな現実

《感染注意の記》

恒例の凧揚げは、あたたかな日差しにあふれた多摩川で。

厚着をしていったが汗ばむような陽気だった。

近くでよそ行きのコートとよそゆ行きの靴を履いた小学三年生くらいの女の子が、お父さんとお母さんと一緒に凧を揚げていて、風のない空になんとか高く揚げようときゃあきゃあ走り回っている。

夫も娘をそちらを見ながら、自分たちの凧に挑戦。

すいっと高く、揚がることは揚がるが長持ちしないで、すとーんとゆるく落ちてくる。

隣の女の子は、母親の揚げた凧を追いかけて、まま、走って!j走って!おちないでぇ!だめ〜、とよくもこんなに走れるものだ、と思うほどずっと走り続けている。

 

私は、早く帰って昼ごはんを食べたい。

私は十年前から餅アレルギー、夫も娘も餅ぎらいなのでお正月からパン食。

ハムと卵のサンドイッチを食べただけなのでお腹が空いていた。

帰ったら、テレビを観ながら食べられるように、チキンのカレースープをたっぷりこしらえてきたのだ。

年末はずっと「探偵ナイトスクープ」の2011年版を観てわらってきた。

年明けだから、違うものを観ようということになったが、なかなか家族の考えがまとまらない。

グレイ・ガーデンズ」という映画にした。

ジェシカ・ラングさんが別人のような婆さんの特殊メークをしていて、娘役のドリュー・バリモアも同様の老けメーク。

しかし疲れてきて最後まで観れず、昼寝をしたあたりから具合が悪くなった。

夕飯を抜けけば治るだろう、と思っていたが、食べてないのに翌朝からものすごい勢いで吐き始めた。

2日は谷中七福神へ行く日である。

新婚の姪夫婦を誘っている。

ドタキャンはない、新年早々。

ダメなら私だけ帰ってこよう、と着物を着てでかけた。

前日痛くてびっこをひいていた右足が、ゲタばきだとすたすた歩けるフシギ。

田端駅で待ち合わせ。

駅到着後、持参したゲロ袋に嘔吐。

息を整えて、エスカレーターで改札口に向かうと、夫が合図をしたので居るのだろう、と思うが逆光で見えない。

手をかざしてふたりを探すが、やっと表れた姪の顔は笑っていない。

ダンナのほうも微妙な顔付き。

七福神に気乗りがしなかったのだろうか?

 

そこから歩き出して、とうとう最後の上野不忍の池の弁財天まで歩ききる。

夫が私のアイフォン・アプリで確認したところ徒歩数13450。

上野のダイニング・カフェに人数分予約してある。

正月どこも予約が取れず、少し値がはるがセットメニューをネット予約しておいたのだ。

午前中仕事だった娘が遅れて合流する。

ずいぶんめかしこんでる。

前菜のパテと、私の注文したサーモンとホタテのムースをぱくぱく頬張り、私の不調はおかまいなしで上機嫌。

う、となってゲロ袋を探して立ち上がると、敏感な姪が大きな目でだいじょうぶ、と聞いてくる。

立ち上がって、トイレにたどり着く前に袋に吐く。

前を歩く人がちらっと振り返った。

私が心配なのは着物。

 

少し休んで席に戻るが、結局食事を前にして、口に入れる気が起こらない妙な感覚。

とうとう私のものは姪のダンナKくんがすべて平らげる。

 

ムンクが来ていて、意外にもすでに開館している。

娘が行ってもいいね、などと言う。

大量のムンクが、このまえ上野に来たときもふたりで観に行ったし、オスロでも観ている。

考えてみれば、この状態で絵画鑑賞はむり。

ひとりで観てくる?と聞くが、ひとりではいやなようだ。

 

会話もはずまなかったし、こちらからのことばに好意的な反応を示さない姪のダンナに気落ちして、上野駅で別れた。

別れぎわの表情も引きずった。

その夜というか、翌朝未明からひどい嘔吐で、翌日昼すぎまで続き、いったん翌日回復したかに見えたが、調合してもらった漢方を飲んだら、嘔吐だけだったのが下痢も加わった。

夜中苦しんだ。

ほとほといやになった。

こちらにどうしても埋めることのできない淋しさがあるから、お節介をやいたり、世話をしようとしたりして、結局裏切られた気分に落ち込む。

「裏切り」ということばが出たら、百パーセント共依存とどこかに書いてあった。

自分が哀れで恥ずかしくなる。

 

翌日、どうにかしてよ、と漢方の先生に電話をすると、ノロウィルスかもしれない、とあっさり言い出す。

え?家族にうつるじゃん、と言うと、

うつりますよ、ときっぱり。

早く言ってよ!

と言うと、

ひとりがなると家族全員がなるこわーい病気ですよ〜

と、ひとの不幸が嬉しいらしい。

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