日本映画チャンネルで、音楽ドキュメンタリー傑作選をやっている。
「遠藤ミチロウ」というロック歌手のことは知らなかった。
私にとって遠藤といえば、遠藤賢司である。
ミチローウさん自身が監督をしたドキュメンタリー映画で、こういう世界もあるのね、と放浪の中年(?)ロカビリー人生がちょっとおもしろかった。
次が「アナーキー」というバンドであった。
その次が「フィッシュマンズ」という知らないバンドであった。
3時間におよぶドキュメンタリー映画である。
主役は佐藤伸治というボーカルであり、このバンドを作った本人である。
お墓参りから始まるので、彼がもう亡くなってしまっていることだろう、と見当がつく。
ぐいぐい最後までひきこまれた。
佐藤というひとのたぐいまれな風貌。
繊細な詩の内容。
かぼそいような、でもしかし弾力のある声。
ああ、このひとは、いきるのむりだったろうなあ、と思う。
彼という才能を支えた周囲もたいへんだっただろう。
もちろん本人が一番たいへんなのだが。
メンバーがひとり人抜け、ふたり抜け、そのたびに苦しんだだろう。
自分自身を責めたにちがいない。
この才能に付き合わされるほうも大変である。
ボーカル不在で演奏を続けるフィッシュマンズをみると、みんな真面目でやさしいひとたちのようだ。
一方であまりにも佐藤の個性とひらきがあって、ハレーションはしょっちゅうあっただろう、と想像できる。
あまりにも強烈な個性というのは不幸だ、と思う。
しかし、死後なおも光りつづける、仲間によってみがかれつづけるひとを不幸といえるだろうか?