鶴見の商店街の外れで、年末福引きに行った夫を待っている。
なにしろ11万円分もの福引き券である。
ガラガラを回すのに時間がかかっっている。
商店街にある古本屋さんの外にだしてあるオール100円コーナーを見ていると、アガサ・クリスティーの名探偵ポワロ「カーテン」がある。
長く続いたBBCのポワロ、最終回がこの「カーテン」で、内容としてはいまひとつ。
「私は自分の創りだしたこの人物がもう嫌でたまらないのです」と知人に訴えていたクリスティーのいやいやさ加減が伝わってくる。
買おうか買うまいか迷う間に、ちりんちりんちりんちりん、と福引き所から当たりクジの鐘が度々鳴るので、旅行券でも当たったか、とそっちをみるが、福引券を手にした買い物帰りの客の影になって夫の姿が見えない。
私にはまったくくじ運がないので、こういうことには関わらないようにしている。
100円だし、まあいいか、と茶色く焼けたページをめくって、クリスティーの作品の硬質な世界に魅了されそうな予感がする。
語り手は相棒ヘイスティングスで、ヘイスティングスの娘のジュイスが父親に反抗的な美しき娘として登場する。
そのさまを「まるで、将軍ホロフェルネスの首を取ったユーデットのような」という表現があり、急にユーディットのことを思い出して、教科書を取り出した。