2021-01-01から1年間の記事一覧

九十九歳と二ヶ月

九十九歳と二ヶ月になったおば、正確には祖母の末妹、とひさしぶりに電話で話す。 半年ほど前、ながく老人施設で寝たきりになっているこのひとから、祖母の昔話しを秘密めかして聞かされておおいに憤慨した。 私にとって母親代わりの祖母が、若い頃、まだ十…

鶴見せんせいの配列

父の飲み友だちの鶴見せんせいは、家庭教師で生業をたてていたが、あるとき小さな塾を経営するようになった。 町工事のドブ臭いような飲み屋に集まる鶴見せんせいと父との関係はよくなったり、わるくなったり、くり返してきた。 いちど、せんせいが金を借り…

仮住まい

仮住まいに移って二週間。 8月15日 日曜日、大雨警戒警報のなか、見積もりを取った結果、法外に思える価格の何社かと比べて格安の運送会社から、ラッパー風の若者たちが朝8時半前にどさどさと登場し、段ボールにつめてない細々したものを横目に、ぜんぶ…

神蔵美子と坪内祐三

本を整理する。 ISBMのあるものと、ないもの、 もう一度読みたいと思うもの、なにかの引用に使えそうなものと「この際思い切ってすてる!」に分ける。 いったん「この際すてる」に分類した「玉電松原物語」を段ボールから取り出して、もうしばらく「たまもの…

スーザン・ソンタグ

スーザン・ソンタグの日記「私は生まれなおしている」1947-1963を読む。 ソンタグは1933 年生まれで、2004年に亡くなっているからだいたい71歳まで生きた勘定になる。 これは彼女の生涯、15歳から31歳まで約16年間の日記である。 レズビアンでありな…

一日

カンペキな一日という日があるものだな、と思う。 いつもであれば、日野の現場はホールがひろく、子どもの数も多くて終わるとぐったりして最近では帰りの電車のなかで居眠りすることしばしば。自宅近くの駅についてから歩くのもたらたらというていたらくであ…

ゆで卵

ゆで卵のからをむくのが苦手で、へんな針が出てくる卵型のグッズを試して自分の指を刺したり、ゆでるまえの卵が割れてしまったり、どうやらむきやすくもないらしく、最近は卵の質なのかなんなのかあまり手こずることがなくなった。 ゆでた卵全体をごりごりま…

細雪

「細雪」をYouTubeで聴く、たいそうしめやかな男性の語りである。 谷崎は、一生すき続ける作家かもしれない、と全集を購入したが「細雪」が入っていないのは、「細雪」がすきじゃなかったからだろう。 しかし本棚を探すと古い新潮文庫があった。 F r.3620と…

死産とまじない

矢川澄子というひとは、子どもの絵本に関係する作家だとばかり思っていたのが、お気に入りのブログ「本はねころんで」さんの記事を読んで再発見があった。 矢川澄子が、澁澤龍彦というひとの元妻であり、なんと谷川巖と恋愛関係にあり、しかも、 というか最…

いちにち

いろんな人がいるもんだなあ、と久しぶりに外へ出るとつくづく思う。 環七を通る通勤時間帯のバスの中で化粧をする女性。 ベージュと茶色でコーディネート。 髪も自然なブラウンとかに染めて。 素足にパンプスのオシャレ。 小さな鏡を覗きこんで、一所懸命眉…

養生施設

数年に一度おとずれる養生施設に行ってきた。 ここには断食目的で過去に五回ほど訪れた。 断食自体は、四十代から数回行っているが、初めて行ったときの爽快感と宗教的ともいえる体験にはその後及んだことがない。 六十を超えると、施設では断食を勧めない。…

ギックリ

とうとうひと月・・。 ある朝、ベッドから立ち上がると腰がまっすぐにならない。 2月22日のことである。 いや、これまでにもあったし、 こういうかんじのとき、 と予定をキャンセルせずに外に出ると、どうしても歩けない。 ますますドタキャンしずらい時…

「たまもの」

「なんじの神をあいせよ」と「なんじをあいせよ」はイコールではないのか? 神蔵美子さんの「たまもの」というい写真集を中古で手に入れて、あたかも自分が環七通りのマンションに暮らしていたような、あたかもそこから三軒茶屋まで歩いていたような、そんな…

中島らも

このところの寝る前の習慣。 中島らもの声をYouTubeで聴く。 アルコールと薬で滑舌があやしくなったらもさん。 なぜこのひとのことばが子守唄として響くのか? そもそもどこから中島らもだったっけ? 目がわるくなっていて、寝ながら本を読むことをなるべく控…

世田谷線

調布の現場へ行くために、二子玉川から1時間に2本出ているバスを利用していたが、コロナ換気で窓を開けているので、朝の冷気がビュービュー頭の上に吹き込んできて寒くてしょうがない。 1時間乗るのである。 途中もぞもぞと座席を変えたりしても、どうした…

2021元旦

もう何年も前から正月らしさを感じることがなく、むりに正月を装うような気分でもないので、ぼっといつもの通りの朝を迎える。 夫がむじゃきに 「あけましておめでとう〜」と起きてくる。 娘が「アケオメー」と起きてきて、ひとりで遅い朝食を作り始めると、…