仮住まい

仮住まいに移って二週間。

8月15日 日曜日、大雨警戒警報のなか、見積もりを取った結果、法外に思える価格の何社かと比べて格安の運送会社から、ラッパー風の若者たちが朝8時半前にどさどさと登場し、段ボールにつめてない細々したものを横目に、ぜんぶ箱に入れてください、ぜんぶですよ、せんぶ、と連呼されながら、これはどこにつめれば、と手に持った道具を持ってうろうろする。

移転先の天候も大荒れ、スマートフォンで調べると、オレンジ色の範囲である。

しかし、この若者たちの日当がどれほどのものかわからないが、この日を変更することにはならないだろう、全員ずぶ濡れになっての運搬。

 

それでもお昼には仮住まいに到着。

猫はケージに入れて終わるまで車のなか、

犬二頭は最後に連れてくる。

新しい住居は、ひとびとの濡れた足跡と汗でいっぱい。

段ボールは濡れて底が抜けそうなものもある。

二頭の犬は不安定である。

猫は、逆上して爪をひっかけて白い毛に茶色い血のしみがついている。

 

生涯、何度目の引越しだろう?

最後の引越しはスリランカから帰ってきたとき、

帰国後二ヶ月半たって、やっと船便で届いてものが、濡れていて、クッションにカビが生えていた。

スリランカ側での引越し作業は、自分でできなかった。

私は一時帰国で日本に居て、シンハラ正月明けに日本人学校へ行く子どものためのランドセルを買う目的で帰国していた。

急遽夫が東京本社に呼び戻され、一時帰国が本帰国になった。

コロンボのママ友が、私の持ち物すべてを片付けてくれた。

大量にあった冷凍してあった日本食は、売りさばいてくれた。

今でも感謝している。

ありがとうジュンコちゃん、ニベちゃん!

 

ほとほと引越しはいやだ、というきもちであったが、今回どうにもならない家の修理で、家財道具いっさいを運び出さなくてはならないという。

なんとか荷物を置いたままできないか、とうだうだ相談すると、工事が長引き、予算が跳ね上がる、と言われた。

おどしのような口調のコンシエルジュ。

がたがた言ってんじゃないわよ!的な。

 

こうして段ボールの山を見ると、なんともくだらない気がしてくる。

こんなにものが必要なの?

これだけのものに、どれだけのお金を払ってきた?

ものたちは段ボールの装いになると、なんともぶざまである。

夫は、景品でもらったボールペンとかついとっておくからなぁ、などと言うが、ボールペンが百本あったって段ボール一個分にもならない。

 

ハイテンションで終了した仮住まいへの引越し。

すぐに使うものとして箱に入れておいたバッグが見当たらない。

箱は先に車に積んでおこう、と思っていたが、車まで濡れるのがいやでうろうろしているうちに姿がみえなくなった。

金品、薬、化粧道具。

あの箱どうした?

しらない、

あそこにあったでしょ!

だれもわからない。

 

翌日雑多なものの入った段ボールのなかから見つかった、

よかった、助かった!

と一段落したものの、

いろんなものが見当たらない。

日々段ボールをひっかはまわしている。

二ヶ月後には、またこれらのものを再び段ボールに詰めてわが家に戻るわけなのだ。

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