北品川

先週、久しぶりに友だちと品川駅で待ち合わせてをして、東海道青物横丁まで歩いてきた。

前の職場の先輩で、品川の出身。

しばらく会わぬ間に六十九歳とのこと。

付き合いはかれこれ四十年近い。

二十代以降、私の身の上になにかあるたびに駆けつけてくれたひとである。

 

品川神社富士講を皮切りに、東海道には数え切れない神社仏閣がある。

どんよりと曇る日だったが、目黒川に面した荏原神社には、寒緋桜という桜の木に花が咲き、カメラマンたちが三脚を構えている。

小さな鶯が、濃い紅の桜の花に溺れながら、飛び交っていた。

 

昔から、私はだれと食事をしても一番早く食べ終わり、

「はやい!」

と言われるたびに少しきまりが悪い。

「はやい!しゃべってたのに」

などと言われる。

それが、彼女とだけはぴったり同じスピードで気持ちがいい。

二人とも特に早いのはお寿司。

一人分やっつけて、追加注文して、みんなとフィニッシュが同じである。

職場の女性たちと、昼休みはいつも一緒に食べていた。

とんかつ屋に入っても、定食を食べ終えて、追加を半分こする仲である。

 

久しぶりに会って、あまりにも彼女の上の時間が止まっているようで、実は少し落ち込んだ。

私の上は、特に早いということはないだろうが、皮膚はたるみ、首にシワがより、裸眼ではなにも見えなくなっている。

七歳も年上なのに、彼女は老眼鏡の必要はないそうである。

歩くスピードは昔のまま、食べるスピードも昔のまま。

なにも変わらないひとである。

昔から驚異的に感じが良い。

いつもにこにこしている。

だからと言って、悪いものは見ない偽善者ではない。

残念なことは残念だ、と言い、

残念だから投書した、などということもある。

 

食べ物やに入れば、店員さんやまわりのお客に対してさりげない。

すっきり綺麗なひとなので、たいていは親切にされる。

さわやかににこにこしているから、こういうひとは歳をとらないのだろうか?

私のように、くさくさしてテレビに向かって
「ばかやろー」

だの

「うるせーよ」

だの

「とっとときえろ」

など言っているから、細胞が歳をとってしまうのだろうか?

うー

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