にあんちゃん

小学校の高学年、五年だったか六年だったか「にあんちゃん」の感想文を書いて、何かのコンクールに入選した、と、優等生のチャコちゃんが担任からほめられた。

チャコちゃんは、ほめられてもぐっとうつむいて嬉しそうな顔は見せず、何の表情も読み取れなかった。

チャコちゃんは、背が高く太めで、顔は平べったくどこも可愛い感じの女の子ではなかったが、勉強がよくできた。

ワルガキの男子から「ぞう」と呼ばれて泣いていたことがある。

 

私もチャコちゃんも本が好きだったから、外国の子ども向けの話に必ず出てくる「日曜学校」なるものに興味を持って、二人で近場の教会へ行って話しを聞いたりしたこともある。

継続して通わなかったところを見るとあまり肌に合わなかったものと見える。

チャコちゃんには兄貴が二人いて、二人とも進学校と言われる中学から高校へ行き、三人の子どもを優秀に育てることに母親が血道をあげていた。

どこの中学へ行くと、どの高校に入りやすいとか、どの高校へ行けばどの大学に行けるとか、先を見て情報を把握している人だ、と母のない私を育てた祖母が父に話していたのを覚えている。

自分が三人の息子を育てた頃と時代が変わってしまった、と思っていたようだった。

チャコちゃんは御茶ノ水に進んだ。

中学になって、一度、バスから降りたチャコちゃんと偶然出会ったが、感想文が入賞した時同様、何の表情も見せず、ずいぶん冷たかった。

 

私も本を読み、作文を書いたが表彰されたことはない。

ピアノもやっていたが、ピアノを弾く女の子に見えなかったらしく、体育館で弾くピアノに指名されたこともなかった。

そのことは、なんとなく悔しかった。

小学生なりに、じぶんが適正な評価をされていないことを知って、気分が良くなかったのだ。

 

チャコちゃんが賞を取ったという「にあんちゃん」を当時、読んでみて、途中で放り出した。

なにかが、小学生の自分にむりだった。

なぜ、そんな反応をしたのか、最近、今村昌平監督の「にあんちゃん」を日本映画専門チャンネルで偶然見て、思い切って図書館で借りて読んでみた。

 

 

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