満席の機内、ほぼ日本人。
小さな子ども連れ、新生児のような赤ちゃん連れの若い夫婦や家族総出のハワイ旅行。
飛行時間は6時間50分。
後ろの座席から、男女の話し声が切れ目なくつづく。
女性の話し方が、さりげなくて穏やか、すらすらと相手の話しに合わせている。
どういう関係なの?
・・と背後の会話に聞き耳を立てている。
町田とか、武蔵なんとかとか、京王線苦手なんすよ〜
あ、それわかる。
週一で、メーカーとのミーティングがあるんで、新宿行っているんですけど、朝の新宿ってすごいじゃないですか、それだけで疲労感ハンパないっていうか。
だよね、あれすごいよね。
などなど。
朝の新宿駅のすごさは知っている。
なんだろう、あのものすごい量のニンゲンたちが、縦横無尽に行き交う。
「空気を読み、スピードを合わせる」ことでしか通過できない。
腰の状態がよくないときは、よくひとにぶつけられた、というか避けることができなかったのだ。
飲み物サービスでアルコールが運ばれると、男性の口調がややあまったるくなり、女性のほうはやや早口になる。
わたし結婚しているのよ。
「・・」
もう7年
「・・そうなんだ・・」
という会話もあり、このふたりの関係がますます気になる。
久しぶりの海外旅行で、しかも土壇場まで決まりきれずにいた。
航空券はすぐに売り切れになるから、航空券だけでも押さえたおいたほうがいい、と旅行代理店からのアドバイスをもらい、ネットで予約した。
クレジットで払い込むところで番号を確認したすきに、羽田便がだれかに取られてしまい、成田便もぎりぎり。
そんな慌てた予約で、つい「通路側」を忘れていた。
エコノミー・クラスの三列席、窓際にわたし、まんなかに夫、通路側の女子は、私がトイレに行きたくて立ち上がり、すみません、と頭を下げると顔を歪める。
イヤフォンとアイフォンの二本のコードを、おもいっきりのろのろ外し、なかなかどいてくれないのである。
昔、娘が小学生のころエコノミーの同じ席順で海外旅行へ行き、娘がトイレに立つと、通路側のフランス人女性は立ち上がり、露骨にいやな顔をしてみせたが、この女子は、席は立たず、膝をななめにして通すこともしてくれない。
「子どもかと思ったら、飲み物サービスでワインとビールを頼んでた」
と夫も隣の女子に興味をもってながめていたようだ。
フライト中、彼女はただの一度もトイレに立たなかった。
ホノルルに着くと、1日もどって昨日の朝9時だ。
昨日の朝9時、私は娘を起こそうか、と迷い、
会いに行く予定になっているCOUCOUからのラインの返事を待ってからにしよう、とアイフォンの画面をながめ、前夜遅くまで仕事だった娘をまだ起こさないことにした。
あのときに戻れたら、
まだいとこの死を知らず。
前日の指導考察を終え、娘を起こしてCOUCOUに会いに行く、そして夜行便でハワイ!
と、もうひとふんばりの感じだったのだ。