梅雨のむしむしがいつまでも続く。
しかし来るべき凄夏の日差しよりましかもしれない。
昼からの仕事がキャンセルになった夫と東大前に出かけることにした。
テーマは「アンティーク着物万華鏡 大正〜昭和にまなぶ乙女の着こなし」
この弥生美術館、あまり人が入っていないのに、勤務している学芸員だか美術館職員だかの感じがよくない。
なぜかれらはあんなにつっけんどんで上から目線なの。
以前の「谷崎純一郎」のときと同じ、古い女性雑誌や小説の口絵などの女性のスタイルを、アンティークの着物で再現する、という手法。
展示の数は大したことない。
着物姿の女性がちらほら。
私も着物で来ればよかった、と思うが、弥生美術館は階段を上がったり降りたりしなくてはならないので、やめたのだ。
一階の展示場を出るところに、京都の呉服屋「かわきた」のお嫁さんの「良子さん」の写真と彼女の実物の着物が展示されている。
紺地に大胆なトンボの絵。
巨大ともいえる大きさのトンボである。
一枚の着物に三匹くらいしか描かれていない。
絵も柄も斬新なもので、着物のイベントなどで帽子にブーツの着物姿の女性がいるが、(この日もこのスタイルの女のひとがいた)そんなひとたちの着るような着物である。
突然「良子さん」が展示に登場するが、それが誰なのか、どういういきさつで弥生美術館にやってきたのか、観ているほうはわからない。
突然の「良子さん」である。
このひとは、嫁いで姑に可愛がられたが、結核に倒れた姑が、看護婦ではなく嫁に看病を頼んだ、という。
結果本人も肺病に感染して亡くなるのだ。
ふっくらした幸せそうな笑顔のモノクロ写真。
姑にきらわれていたら、長生きできたかも。
今回の展示で、おもしろかったのは、三階の長襦袢のコーナーで、「ご自由にお羽織ください」と素敵な長襦袢が数枚ある。
そして写真もご自由にお撮りください、とある。
大判振る舞いである。