保育園に入ってく細い道の手前の信号機。
二車線の道路が交差し、次の信号では、五叉路の大きな道路が控えている。
私の出勤時間には、さほど混雑していなくて、のっぺりと長い信号の変わるのを待つのがつらい。
夏はかんかん照りを避けて道路沿いに建つ一軒家の日陰に入って待つことにしている。
冬の空っ風には避けるすべはない。
あいにく赤信号にひっかかった。
左右見回しても、車の気配はないが、よく見ると右方向から原付バイクが進行してくる。
あ、と思って信号の変わるのを待つことにした。
向こう側には、自転車にまたがったおばさんが、田舎風の帽子をかぶって信号待ちしている。
数日前、車を運転していて、交差点で信号が変わったので、右折しようとしたら、黒ずくめのチャリ男が直進してきて、フロントガラス越しに、手袋の人指しゆびをいっぽん立てて威嚇した。
これ、あたしに?
と傍の夫に聞くと、そうじゃない、と控えめにいう。
え、なんで?
というと直進車優先だから、
えー、
くにえがわるい、
スカした黒ずくめのウェアーに濃いサングラスをかけた男性の、たとえフロントガラス越しであっても、その威力はなかなかのもので、そのショックから私はいつも信号無視している道路をじっと待ったのである。
やっと信号が変わり、歩き出すと、
やわらかな声が「おはようございます」
と言った。
見ると、田舎風の帽子をかぶったのは園長で、園長は、信号を待つあいだの私の葛藤を見ていたのである。
mad hatter の帽子!