「古事記を勉強している」と知り合いに言うと「へえ」とか「いいじゃない」とか答えが返ってくるが、
「試験がある」と言うと「え?」と言われる。
「それでなにかになるの?」と聞かれるが、もちろんなんにもならない。
「自分がどれだけ理解していて、どれだけ理解できていないか、がよくわかるよ」と言うと、信じられない、という顔をされる。
もっともふさわしい内容はどれか、という五者択一式の問題。
どうもよくわからない文章があって、果たして正か誤か判断がつかない。
隣の男性は、さっさと試験を終えて、会場を出てよいタイムラインになると、すっと席を立って帰っていく。
プレッシャー。
たいてい早く終わるので、終了より少し早い時間に夫と待ち合わせをしているのだが、考えれば考えるほど正のようでもあり誤のようでもある。
考えれば考えるほと、わからなくなる。
えいっと五者からひとつを選び、席を立った。
アップリンクで時々映画を見る。
映画より、アップリンクのレストランのラム肉が好きである。
開店まですこし時間を潰してから、レストランへ行くと、もうひとが入っている。
車椅子のひとも、介助者も、ひとりでふらっと来ているひとも、キャリア職らしい女性ふたりづれも。
ランチプレートは量が少なめで、ふた皿いけそう。
夫はこのあと入っている仕事のことで頭がいっぱいで、口数が少ない。
気もそぞろなので、出ることにする。
せっかく試験が終わったのに、ひとりで帰ってもつまらない。
ひとりでテレビを観るほどつまらないことは世の中にない。
「映画観てこうかな」と言うと「観ていけば」と夫。
チケット売り場で、今から観れる映画ありますか、と聞くと、ジエイムス・ブラウンの「Mr. Dynamite 」が始まったばかり、と言われる。
夫の顔を見ると、もうその場を去ろうとしているので、お願いします、と言う。
と、「シニアでよいですね」と言われる。
がぁぁぁぁぁぁぁんの一瞬。
え?60過ぎにみえるの、わたし(あんた62でしょうが!!)
こないだひさしぶりに会った昔の同僚から
「どうみても50、化粧の仕方によっては40代!」 と言われたばかり。
そのことば、しっかり胸にかみしめていたのに、この見ず知らずのねえさんは、私の年齢を年齢どうりに言い当てた。
おもーくひきずりながら、よろよろと大して観たくないジェイムス・ブラウン上映中の部屋に入って、ハンモックのような座りにくい椅子に座る。
このひとはすごいなぁ。
踊りだすと、麻原彰晃のような力みもなく地面から足が浮遊しているがごとくである。
残念ながら、途中でトイレに行きたくなってしまい、中座してそのまま家に帰った。
翌日、夫に話すと、
「そうか、見栄はって高い券買うわけにいかないしな」と言う。
深追いしたくない話題のようである。
毎年、ひとは夏に年を取るよなあ、自分もひとも。