土曜日の銀座

休日にひとりで家にいるのがいやなので、朝早く出た夫につづき、早めのお昼を食べて外出する娘と一緒に家を出た。

フェイス・ブックでちょっとおもしろそうな絵画展の記事を見たので、思い切って行ってみることに。

夫と違ってアイフォンの地図ではなく、手書きの地図。

「こんなところに日本人」という千原ジュニアの番組で現地のひとの書く地図が笑い者にされるけど、あんなかんじ。

ばかだからか、ちゃんとした地図は読めないし、読めば読むほどにわからなくなるのはなぜだろう?

 

品川駅で娘と別れ有楽町。

初めて高校の友人と一緒に行った銀座。

役所時代の友人と行った銀座「琥珀亭」の珈琲。

ライオンで酔い取れていた公務員時代、私のなかで銀座は変容する。

友人たちは、家族と一緒に出かけた銀座で入る店が決まっていたのだろう、高校時代の友人と入ったそば屋。

三越を斜めに見て、晴海通りに面したラーメンや丼もののあるふつうのそば屋。

一緒にうどんをすすり、男性客が「ごちそうさまでした」と出て行ったとき、

ああいう男の子ってかわいい、と彼女がどんぶりに顔を近づけてそっと言った。

ちょっと気取った鼻にかかった声。

ほんの短期間の友達関係で、後味わるい終わり方だったが、中高一貫校で中学から女ばっかりだった私と、高校から入ってきた彼女には男子との交流があり、男子に対しての言動にびっくりすることがあった。

そのとき、ごちそうさま、とお勘定を済ませてそば屋を出ていった男子ではなく、ああいう男の子ってかわいい、と言う彼女、

くすりと笑ってそういうことを言う彼女に感動した。

そういうふうに思うものなんだ、と。

そういう男の子は「かわいい」ものなんだ、と。

 

私の地図がわかりやすかったのか、すぐに画廊が見つかり、入ってよろしいですか、と聞かなくては入りにくい空間にそっと入る。

つまらなかったのは、ハンコで押したように同じパターンの絵が並んでいること。

私は、逆さまになって落ちていくひとの絵に興味を持っていて、たとえばフリーダ・カーロのエンパイアから飛び降り自殺した女優の絵や、宇野千代展で見た落ちる女の絵。

作家さんが、なんとも自信なさげにうろうろしていて、しばらく観ていたが、帰りに外に立っていた作家さんに、挨拶して帰ってきた。

せっかくなので、山野楽器で楽譜を買って帰ることに。

ちびちび爆弾のいとこが、人生でやりたいこと100のリストを作るといい、私は100なんてすぐいっぱいになった、と言うのでやってみたら20くらいしかない。

だめ、100なくちゃ、と言われる。

あと80・・。

そのなかに、バッハの平均律二巻に挑戦する、というのを入れた。

なんとなくまあ一巻で十分という気がしていたのだが、二巻に挑戦しない理由もない。一ができれば二だってできるかも。

で、クソ山野楽器で第二巻を買い求めた。

なぜ「クソ」かといえば、店員がたくさんいるのに、上の空でなにを聞いても満足に答えられず、それでいい、と思っている客あしらいが何年も前から気に入らない。

忘れてつい入ってしまう。

ネットで買うと送料がかかるしね。

 

そこで偶然みつけた遠藤賢治の特集雑誌。

「ありがとう遠藤賢司」となっているのはどうして、と思いながら帰りの電車で読んだら、去年亡くなっていた。

「ありがとう」は「さようなら」だった。

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