平和な昼下がり、犬と散歩していると、公園の入り口から男の子たちの声が聞こえてくる。
いやなかんじの声である。
周りに向かって、自分たちの力を示そうとするかのような、あるいは仲間同士牽制し合うような。
保育現場で、四歳の男子に手を焼いている。
ちらちらと仲間どうし伺いながら、大声を発したり、悪さをしたり、おとなを無視したりする。
四歳児であっても、四人以上の集団となると手ごわい。
授業妨害というようなシーンが、私のムーヴメントのたかだか三十分くらいの時間に起こっていて、どうすることもできない。
「ピアノの音に耳をすまして」などとんでもない。
犬とそっちに近づいて行く。
避けて通りたいのだが、その道を抜けなければ、次の公園にたどり着けない。
中学の制服を着た男子が、一台の自転車を囲んで、大声を出している。
自転車には、子ども用の椅子、でかいプラスティックの椅子、歩道をすれ違うときぶつかりそうになるあれ、が付いていて、とても中学生が乗るようなチャリではない。
そのチャリにひとりが乗り、囲んで騒いでいるのだ。
公園のなかには、掃除のおじさんたちがいて、その光景を知っていはずなのに、もくもくとほうきで落ち葉をはいている。
私が見ているのを意識して、ちょっと沈黙がある。
えー、マジ?
などという声がすると、中学生がママチャリに乗って走り出す。
気をつけてよ、
などと言っている。
弟か妹が生まれたのかも、
などとおばさんは考えている。
なんだかあやしいな、
帰りは、その道を通らないように、迂回したら、なんと再び一団に遭遇。
空き地にママチャリを止めて、空き地にむかつて、なにか投げている。
そして、チャリを放置して去った。
えー、これって犯罪?
仕事中の夫に電話すると、
「どうしたの?」
わけを話すとそりゃあ、通報したほうがいいね、自転車の持ち主が困ってるだろうから、と言う。
そうだよね、と私。
これが父なら、「放っておけ」と言うことだろう。
「そんなことしてお前にとばっちりがきてみろよ、ばかばかしいぞ、やめておけ」
と言うだろう。
私は110番に電話する。
その番号はつながりません、と機械音。
え?
いざということにつながらないの、なによ、と何度か電話する。
つながらない。
冷静に考えてみる。
いちいちれい、いちいちれい?ひゃくとおばん?
そうか、ひゃくとおばんって100じゃないや。
110にかけるとかんじのよい女性警官が出て、自分のいる位置や、目撃した場所の説明をするが、けっこう難しい。
場所をしらないひとに説明するのも難しいが、夫に説明するのも難しかった。
え、あんなところに空き地あったっけ。
ほら、三角が小さかったころ、ガム買っては当たっておまけもらってたパン屋さんあったでしょ、あそこが壊されて新しい家が建って、その隣だよ、
と説明するのだが、不審なかお。
ようやく、犬の散歩でそこを通りかかったので、ほら空き地、あるでしょ。
と説明することができた。
空き地がまだ空き地でほっとした。