JR 蒲田駅

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私鉄を二本乗り継いでJR蒲田に降り立つと、そこはどこの駅とも違うアナーキー

渋谷とも新宿とも、川崎とも違う。

どこか羽田沖の潮の香りが漂っている。

どろくさい空気である。

 

私が行く仕事場は、私が育った地域にある開発されてしまった京浜第二国道沿いのビルのなかにある。

かつては東京計器とよばれ、両親と父方のいとこたちと一時期一緒に暮らした住まいがあった場所であり、のちにもう少し東に土地を買って家を建てるまでのあいだ暮らした場所。

羽田闘争があったときは、負傷した学生が担ぎ込まれ、またのちに養母が腹違いの弟を出産した蒲田総合病院が近くにある。

近所に住む友だちが働き始めてすぐに父親と車を共有して、家に駐車スペースがないので病院の駐車場を使い、ゲートが閉まる前に移動させていた。

めんどうなことをするもんだ、と内心思っていた。

 

実家で暮らしていた頃に、駅から歩いた経験は一度もなく、常に混んでいた京浜急行バスに乗って駅まで行く意外考えたこともなかった。

私立中学へ通うバスの運転手が乱暴で、待っていても乗れないようなこともあった。

家に帰って文句を言うと「歩け」と父に言われた。

昔は駅まで歩いていたんだぞ、と。

とんでもないことを言うと思ったものだ。

 

二度のイスラム圏での生活のあと、おんながひとりで外を自由にあるく恩恵に目覚め、以来歩くことがすきになった。

とはいえ、JR蒲田駅から国道沿いのビルまでの道は、殺風景という以上に歩行者を疲れさせる。

香料の会社のあったひろい敷地が大きなピルになっていて、そこのトイレを使うことにしている。

大きくてがらんとしている。

 

環八通り沿いを歩いて、京浜急行開かずの踏切渋滞解消のため高架線路にしたが、なんともつぎはぎの感じ。

その下の道路を横断するのはいつも怖い。

待機する大型車に迫られて、青信号の時間ぎりぎりに渡り切れるか不安になる。

下手すると中間地帯に置き去りにされるのだ。

広告では駅から15分というこの道が疲れる理由は、

剥き出しの機械の部品のあいだを歩かされいている感覚である。

 

バス通りが拡張され、バスルートが変わり、どこがどこだかわからなくなっている。

東京計器のあったころの空気を嗅ごうとして空を見上げると、秋の青空から強い日差しが差し込んでくる。

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