湯河原町

せっかく湯河原で朝を迎えたのだから、朝の海へ行ってみよう。

一泊2食付きで、1万8000円。

温泉とヴィーガンの宿。

朝食は、8時半から。

6時少し前に宿を出た。

前夜、宿のひとに海への行き方を聞いたのだが、どうもうまく説明できないとみえて、地図をくれたが肝心の宿がどこにあるのか印がない。

家族にLINEで聞くとすぐに地図を送ってきてくれて、簡単だよ、さんさん通りをまっすぐあるいていけば海、と書いてある。

いざ、宿を後にするとさんさん通りがどこなのか、通りは何本もあるが、通りの名前はどこにも書いてない。

こっちでいいのかなぁ、海っぽくないな。

明るい朝日の照らす人気のない通りを歩いてくる男性に聞いてみる。

東京ではめずらしいくわえタバコ。

海ですか、海ねえ、けっこうありますよ。歩いて行くんですか?

と言われる。

一番わかりやすいのは駅まで行って、駅前を右にまっすぐにひたすら歩いて左に曲がると海にでるはずです、としばらく考えてから説明してくれる。

どうも家族が送ってきた地図と違うし、徒歩20分というのに。

このひとはきっと歩いて海に行った経験がないのだろう。

もうすこし、このまま歩いてみることにした。

なんとなく、風景が海っぽい?

しばらく歩くうちに、風のにおいか、植物か、なんとなく海の気配がする。

ひょいと外へ出て、中に戻ろうとしいる女性に声をかける。

きれいにお化粧をして鼻歌をうたっている。

「すみません、このまま行くと海に出ますか?」

花柄のサマーセーターに黒いスパッツをはいて、きゅっと髪を後ろに結っている。

「え、海?行くわよ、行くわよ、まっすぐに行くと海よ」

とほがらかな声。

「ここまっすぐに行くと、トンネルがあるから、でも、初めて行くなら、道路を渡ったほうがいいか、トンネルだと早いんだけど」

このままでいいんだ、と安心してありがとうございます、と立ち去ろうとすると、

「海に行きたいのよね」

と声が追いかけてくる。

 

前を歩く年配女性。

腕をぶんぶん振りながらおもいっきりのウォーキングスタイル。

彼女の後を着いて行くと、トンネルをくぐる。

広い車道をくぐるためのトンネルで、女性はトンネルに入ってこちらを振り返る。

海岸に沿った大きな緑地があって、ちらほらとお年寄りが集まって、ベンチにふたりで腰掛けている女性に、海に出たいんですけど、と言うと、こっちじゃないの、と立ち上がって、もと来たほうへ案内してくれる。

緑地の隣りは、中学校なのだが、緑地と学校のあいでの自転車置き場の向こうに階段があるらしいので、そこへ行ってみる。

階段を降りると、砂浜に出るかと思ったら、べったりコンクリート舗装してあって釣り人がいる。

見渡す限りテトラポットである。

残念。

 

またトンネルをくぐって宿にもどった。

ラジオ体操を終えたお年寄りとふたたび一緒になる。

近所で誘い合ってラジオ体操へ行くお婆さんふたりが、おしゃべりしながら前を歩いている。

どうする、寄ってく?

などと言うのかな。

いや、朝は忙しいもの、

とか。

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